夏休みデビュー
そんな私も、夏休みの南国ビーチを前に気持ちが高ぶっていたのかも知れない。
「スク水なんて着てられるかっ!」
朝のホテルの部屋で、裸で仁王立ちしながら海を見下ろし、私はそう叫んだ。
その手に握られていたのは、普段の私からは想像も出来ない大胆なビキニ。
鏡に映る自分を見て、思わず口元が緩んだ。
いつものお団子は、少しだけ崩してラフに。
メガネは外さず、そのまま。
太陽の日差しが降り注ぐ白い砂浜は、私のおでこよりも眩しかった。
ビーチに降りると、波打ち際の風が肌をなで、
通り過ぎる人の視線が、やけに意識に刺さる。
「大胆ビキニで大人なサマーバケーション!みんな私を見てる、なんて快感なの♡」
私はそんな事を想いながら、胸の奥がくすぐったいような、落ち着かないような、何とも言えない優越感に浸っていた。
しかし、家に帰ると興奮も冷めやり、改めてスマホの写真に写る自分を見た私は、普段着ているスク水の日焼け跡バッチリで、どう見ても夏休みデビューバレバレなのが恥ずかしくなり、枕に顔を埋めながら足をバタバタさせるのであった⋯
あれから数年経った今も、この日の写真は誰にも見せていない。
でも、少しだけ大人になれた気がした、私の大切な思い出♡
呪文
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