10万いいね御礼
はじめてしばらくの頃、自分のなかで目標を10万に定めていました。
ですが、到達できるか夢みたいな話しだなあ、とも思っていたので、なんだか嬉しいです。
感謝の正拳突きをしようか悩みましたが、腕が疲れそうなので、ショートストーリーで許してください。
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■白樺碧という少女
【4枚目】
構造生物学の権威、白樺博士には孫がいます。
白樺 碧(しらかば あお)、17歳。
飛び級に次ぐ飛び級で、いまは大学院で祖父の研究を手伝っています。
白樺博士の目が光っているのでおいそれと手は出せませんが、研究生達の密かなアイドルのようです。
【5枚目】
碧は最近、生き物を飼い出したようです。
なんでも路地裏で甲高い声が聞こえたので行ってみたら、白いラッコがいたとか。
食事代が大変そうですね。
これはその時の様子。
「キャー、キャー」
ゴミ箱のなかで白いラッコが甲高い声をあげていました。何かを訴えるように。
碧は物怖じすることなく、白いラッコに近づき、マジマジと観察します。
「おや、君ただのラッコじゃないね。生態改造のあとがある……ふーむ、これは日本の技術じゃないな、どこの国のミュータントかな?」
遠慮なく白いラッコの体をいじくり回す碧。良い子のみんなは野生動物に急に手を出してはいけませんよ。バイキンとかありますからね! 碧はちょっとネジが飛んでるのです。
「キャー!」白いラッコは「やーめーてー」というように手をバタバタさせて、なんとか碧の手からすり抜けると、近くにあったタブレットを掴んで、慌ててタカタカと画面を叩き始めました。
碧が覗き込むと、白いラッコはくるりとタブレットの画面をこちらに向けました。そこには日本語で(丁寧に漢字変換までされて)、切実なメッセージが刻まれていたのです。
『とてもお腹が空きました』
【6枚目】
「ねえおじいちゃん、生き物飼ってもいいかな?」
多忙な白樺博士がわずかな隙間時間でコーヒーブレイクしていると、目に入れても痛くない孫娘がやってきて、お願い事をしてきました。
「いいともいいとも」
孫に甘いおじいちゃん、二つ返事でOKします。
ちょっと情操教育に失敗したかな? と思うぐらいには他人に無関心な碧を心配していた白樺博士は、動物を飼うことで何かのきっかけになったらいいかなとも考えます。
「犬かな? 猫かな? おじいちゃんの知り合いにブリーダーさんがいるから、声をかけてみようか?」
「んーん、大丈夫。もう飼うの決めてるから。というか、連れてきた」
「え、そうなのかい? 犬かな? 猫かな?」
白樺博士のなかにペットは犬と猫しかいないようです。
そんな祖父に碧は元気に答えます。
「ラッコ!」
【7枚目】
白いラッコに大量のホタテを食べさせた碧は、白樺博士が1回の食事代でアワアワしているのをちょっと微笑ましく思いながら、一人で地下室へと向かいます。
碧は毎日、この地下室へ来ます。
ここでその日あったことを振り返るのが、碧の日課であり日記代わりです。
【8枚目】
地下室には大きなカプセルがあり、そこには少女が一人、横たわっています。
見た目は碧によく似たその少女ですが、ひとつ大きな違いがあります。
少女には白くまの耳がついているのです。
碧はそのカプセルを前に、いつものようにゆっくりと、その日のことを話します。
「今日は白いラッコを拾ったんだ。脳まで手が入ってるし、使われてる薬物も西側のものじゃないから、あっち側のミュータントかな。危険じゃないかって? どうかな。逃げ出してきたって感じだけど。
体はボロボロだし、もう長くは生きられないんじゃないかなって思ったから、そうしたら放っておけなかったよ。さっきご飯をあげたら、はしゃいで嬉しそうに食べてた。それだけで、連れてきて良かったって思えたかな。
あのラッコと私、どっちが長く生きられるだろうね」
碧はそれからしばらく、カプセルの少女を眺めていました。
「君を起動してあげることができたらいいんだけど。おじいちゃんは私がいなくなったらきっと寂しがる。私の姿を持った君なら、私の代わりができるかもしれない。………いや、これは自分勝手な願望だ。君はそんなこと望まないだろう。
もし目覚めたら、君は世界をどうするだろうね?」
これは白くま少女が目覚める、少し前のお話し。
なお、白いラッコはすでに、2回目の食事を要求していました。
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呪文
入力なし