第三幕_三日月の夜
まぁ、ヤクザモンという職業柄、よく思わない人も多かったとは思うけど、
それでも、他の組よりは街の人達からは親しまれていたとは思う。
それもウチの先代からの
「鶴のように恩は忘れるな。返すときは鳳凰のように豪華に」
という家訓によるものがあったと思う。
特に先代、つまりは私の父親の人柄も大きかったと思う。
普段の父はとても組の若頭とは思えない、
威厳もない、テキトーでちゃらんぽらんなダメおやじだった。
でも、困っている人がいると、ぶつくさと言いながらも放っておけず、
しのぎにならないような、面倒なことでも勝手に引き受けて
翌日には傷だらけで酒を飲んで寝てる姿をよく目にしたものだった。
まぁ、腕だけは確かで、その腕っぷしは城の武将も一目置くほどだったから、
そういう意味では、街では困ったときの用心棒みたいな立ち位置だったようには思う。
組員もそんな父に憧れてるやつが多い、
良くも悪くも親しみやすい、持ちつ持たれつの組だった。
そんな父を一番尊敬していたのが、私の5つ歳上の姉の牡丹だ。
姉は母のいないウチでは母代わりだった。
着物の着方や礼儀作法、剣術、色んなことを姉から教わった。
街でも評判はよく、よく気の利くお姉ちゃんだねとか、
美人なお姉ちゃんだねとか言われることが、
自分のことのように嬉しかったし、自慢の優しい姉だった。
姉はよく夜に父と剣術の修練に励んでいた。
まぁ、父は乗り気ではなかったけれど、
酒と金は姉が管理してたから、姉に逆らうとロクに遊べないから渋々付き合ってた。
父もおじいちゃんも組員も姉には頭が上がらなかった。
4年前のあの日も、姉は父に食後に剣術の修練を頼んでいた。
私はその日何故か異様に眠かったから、早めに床についた。
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