火野神社水泳部 外伝第28話2
直前まで続いていた、みちるとらんまの感動的な演技。
会場は異様な熱気に包まれていた。
せつなは静かにモニターを見つめる。
モニターには90.650を叩き出したらんまと、89.050のみちるの順位表。
せ「……すごいわね。」
スタッフ「せつな選手、まもなく入場です。」
せ「ええ……」
しかし、その声は少し硬かった。
プールサイド。
良冥が心配そうに母を見る。
良冥「ママ、大丈夫?」
せ「大丈夫よ。」
良冥「嘘。」
せ「え?」
良冥「ママ、緊張してる時は右手を握るもん。」
せ「見抜かれていたのね。」
良冥「だって息子だもん。」
せつなは思わず笑った。
だが緊張は消えない。
その時。
?「せつなさん。」
聞き慣れた声。
振り向くと――
黄色いバンダナを巻いた男。
夫、響良牙だった。
せ「良牙。」
良牙「みちるさんも、らんまも素晴らしかった。」
せ「ええ。」
良牙「でも。」
せつなが顔を上げる。
良牙「せつなさんは、せつなさんらしい演技でいいんです。」
せ「……」
良牙「誰かと競う必要なんてありません。」
良牙「俺が好きになったのは、みちるさんでもらんまでもない。」
良牙「冥王せつな、なんですから。」
せ「良牙……」
良冥も前に出る。
良冥「ママ!」
せ「良冥。」
良冥「僕、ママの演技好きだよ!派手じゃないけど、綺麗で。なんか時間が止まったみたいで!だから頑張って!」
せつなの目が少し潤む。
そこへ通りかかったらんまとレイ。
ら「おっ、家族会議か?」
レイ「ふふっ。」
良牙「せつなさんを送り出してるんです。」
ら「なら俺からも一言。」
せ「?」
ら「俺やみちるさんの真似はするなよ?」
せ「え?」
ら「せつなさんにはせつなさんの青春があるだろ。」
レイ「そうね。」
ら「せつなさんの時間を見せてこい。」
みちるも歩いてくる。
み「あなたの演技、楽しみにしているわ。」
は「優勝争いだぞ?」
み「いいえ。」
みちるは微笑む。
み「私たちはもう勝負を超えているもの。」
入場アナウンス。
実況「さあ、いよいよ本日最後の演技です!」
実況「静寂と時を司るアーティスト――響せつな選手の登場です!!」
観客席から大きな拍手。
せつなは振り返る。
良牙。
良冥。
仲間たち。
みんなが笑っている。
良牙「行ってらっしゃい。」
良冥「ママ、優勝だー!」
せ「ええ。」
せつなは静かに微笑んだ。
せ「行ってきます。」
そして冥王せつなは――
夫と息子の想いを胸に、"時"をテーマにしたフリールーティーンへ向かうのだった。
実況「海王みちるの『愛』、火野らんまの『青春』に続き―冥王せつなが表現するのは何か!?」
会場の照明がゆっくり落ちる。
静寂。
そして、運命の音楽が流れ始めた――。
呪文
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