桜の記憶その❷
柳の枝があまりにも緑で、
思わず友達にスマホで撮ってもらった。
「ねえ、柳って縁起悪いんじゃねえ?」
「あ〜たしかに。幽霊のポーズって柳の枝みたいだよね」
「なんか変なの写ってたりしてね」
最近こういう話もしなくなったな、と思いながら家に帰った。
京都の生き字引であるおばあちゃんに聞いてみる。
「おばあちゃん、柳って縁起悪いの?」
「ああ、白川の柳見てきたのかい。桜も満開で綺麗だったろう?」
質問に答えないので、スマホの写真を見せてやる。
“こんな縁起の悪いもの消しなさい”って言うタイプの年寄り用語を
わざと期待していたのに、
「緑がきれいだわ〜。川に落ちないように気をつけないとね」
なんか、すかされた。
「じゃあ柳ってそんなに縁起悪い木じゃないの?」
「あはは、そんな木をわざわざ京都の中心街に植えるもんですか。
柳は水が好きでね、川沿いに植えると根が川の氾濫から守ってくれるのよ」
へ〜、じゃあむしろ縁起いいんだ。
「陰陽道じゃあ柳は“陽”よ」
「陽って、コロナ陽性じゃなくて光のほう?」
「そうそう」
「じゃあ柳と桜の白川ツーショットって、W陽性なわけね」
「あははは」
おばあちゃんは続けた。
「桜は“陰”なのよ。すぐ生まれて、すぐ散っていく。
生と死を表す木。
柳はいつも緑で、永遠の生。
どっちが縁起悪いって言うんだい?」
「ええええ?普通逆じゃん!」
文化って面白い。
「じゃあなんで柳が縁起悪いって言われるの?」
「そうね……幽霊さんのポーズが柳の枝みたいだからかしらねえ」
その言い方がなんだか可笑しくて、
ああ、やっぱり私はこの人の孫なんだなと、
妙に納得した。
呪文
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