水着モデルは初めてで
『うん、楽にしてよ』
翌日、僕たちは庭園の物置小屋のさらに奥に移動した。
僕たちにとっては懐かしい場所だ。
「ここなら昔と同じで、使用人は来ないわ。誰にも見られないから」
『でも、全然変わってなくて驚いたよ』
「掃除だけ、軽くね」
リアはそう答えたが、椅子や机にはさしたる埃もない。
定期的に見てくれているんだろう。
部屋の様子を確認しつつ、僕は手早く準備を進めた。
部屋の奥には巨大な横長の布が拡がっていて、そこには海岸の風景が描かれている。
これも前と変わっていない。
『あの絵もまだあったんだね』
「ああ、あれ? 貴方の力作じゃない」
『僕のじゃなくて、僕とリアのだよ』
「私は手伝っただけよ。……それより、準備が出来たら始めましょう」
僕は頷くと、持ってきたタイムウォッチのスイッチを押してクロッキーを開始した。
静かな空間にペンの音だけが絶え間なく響いていく。
呪文
入力なし