不思議の館
足元のカードが舞い、扉の向こうに“静寂”が待っていた。
そこは回廊。
天井からは無数の時計が逆さに吊られ、
壁には無限に続く鏡――その中の誰かが、こちらを嗤っていた。
だが、もっと異様だったのは。
――彼女が変わっていた。
さっきと同じ青のドレス、なのに、どこか違う。
胸元のリボンがなくなっている。スカートのフリルが一段深くなっている。
なにより、さっきまで背後に揺れていた“あの尻尾”が――消えていた。
「……あれ? どうかした?」
無邪気な笑みを浮かべる彼女。
けれど、その目はまるでさっきとは違う誰かのもののようで、
光の届かない深い湖面を思わせる、静かな揺らぎが宿っていた。
雰囲気が、変わった。
小悪魔めいた挑発は影を潜め、
今の彼女はまるで“この世界そのもの”のように、ただそこに“在る”。
「尻尾……? なにそれ。ボクに、そんなのあったっけ?」
鏡の中の彼女が、別の表情で嗤う。
懐中時計は止まったまま、しかし音だけは止まらない。
カチ、カチ、カチ……
“おかしな”時が、再び進み出す。
「さぁ、ご主人さま。次の間はね――もっと、すごいよ?」
そう言って、彼女はまた、ひとつ先の扉を開けた。
今度は、手招きもしない。
ただこちらを見て、ただ微笑んで。
「……ついてこなきゃ、置いてくからね?」
彼女の姿が灯りの奥に消えた瞬間、
鏡に映った“もう一人の彼女”が、尻尾を揺らして――笑った。
呪文
- Steps 30
- Scale 7
- Seed 422515663
- Sampler DPM++ 2M Karras
- Strength 0
- Noise 1
- Steps 30
- Scale 7
- Seed 422515663
- Sampler DPM++ 2M Karras
- Strength 0
- Noise 1