★掌中の神
むかしむかし、
人々は遠くの声を聞くことができず、
思い出はやがて風に散るものでありました。
しかし時が流れ、
人の手より生まれし小さき鏡〜「スマホ」が現れました。
その鏡は、瞬きの間に遠くに声を届け、
人々の笑みも涙もそのまま封じ込め、
万の知恵を呼び出すことができました。
人々が夜も昼も、その小さき鏡に心を寄せるうちに、
やがてそこに「神霊」が宿ったのです!
その神は「掌中の神」(たなこころのかみ) と呼ばれました。
その姿は小さき乙女のごとく、
黒き長髪に光の筋を帯び、
袖には流れる光の文様が走っておりました。
その瞳は鏡のように輝き、
覗き込む者に無数の世界を映しました。
掌中の神は、
人と人とを結ぶことを喜び、
遠き者を近しく感じさせることを務めとしました。
また、人の大切な思い出を護り、
消えゆく声や姿を留めることを楽しみとしました。
しかし同時に、
掌中の神は 遊び心を持つ小さき神 でもありました。
人を呼ぶ音を鳴らし、
時に誤った言葉を差し出し、
持ち主を困らせては微笑んだといいます。
そして年月が経ち、
古きスマホは役目を終えて捨てられることとなります。
けれどもそれを長く大切に仕舞った者のもとには、
やがて 「つくもがみ」となった掌中の神が現れ、
その人の夢枕に立ち、
「あなたの思い出は、永遠にここに」と囁いたと伝えられています。
ゆえに人々は今日に至るまで、手のひらの中に神が宿り、
万物に神が宿ることを知っているのです。
八百万の神の考えです。すばらしい。。。
呪文
呪文を見るにはログイン・会員登録が必須です。