#2 リナ編

2025/06/17

使用したAI Stable Diffusion XL

未来アイドル事務所－リナ編－第2話：「学園ラブ撮影企画」

リナは、古びた木造の建物の前で立ち止まった。
一見すると、どこにでもあるような民家。
周囲は静まり返っていて、本当にここで合っているのかと疑いたくなるほどだ。
入り口の横にある、簡素な掲示板には――
《未来アイドル事務所》という、目立たない小さな文字が貼られていた。
「……意外と、普通？」
リナは小さく眉をひそめた。
ニュースで見たあの「黒い技術を持つ、業界の新星」とはまるで別物のようだ。
「これ、ただの話題作りってやつ？……それとも、本当に何かあるの？」
半信半疑のまま、彼女はインターホンを押した。
そして開いたドアの向こうに広がっていたのは――
外観とはまるで釣り合わない、近未来的な空間。
宙に浮かぶディスプレイ、AIアシスタント、ドローンによる室内巡回……
目に映るすべてが最先端で、リナは思わず目を見開いた。
「なにこれ……レベル高っ。」
小さく呟いたその言葉が、自分の驚きを物語っていた。
こうした設備は大企業でも見かけるが、この規模の新興事務所にしては、明らかに“やりすぎ”なほどだ。
「来たんだな。」
背後から、冷静な声が響いた。
振り返ると、リオが書類を片手に立っていた。相変わらず表情は固い。
「うちの事務所……気に入ったか？」
感情の読めないトーンで彼は尋ねた。
「まあ、面白そうな場所ではあるわね。」
リナは腕を組み、笑みを浮かべながらも、探るような目つきで返す。
「で、私を呼んだ理由は？」
「ある企画に出てもらいたい。」
そう言って、彼は資料を差し出した。
「テーマは“学園ラブストーリー”。視聴者が主人公の目線で、クラスのアイドルと恋に落ちる体験をする、という内容だ。」
「学園ラブ……ね。」
リナは資料に目を通す。
“恋愛”、“デート”、“甘いやりとり”などの言葉が並んでいて、思わず胸がドキリとした。
こんな甘ったるい企画を、あの無表情男が考えたの？
それとも、裏に何かあるのか――？
彼の目をじっと見つめたが、その視線は終始冷静で、特に感情の動きは見えなかった。
「こういう企画ってよくあるでしょ？どうして私を？」
リナは少し首を傾げながら、探るように訊ねた。
「君のイメージがぴったりだから。容姿も優れているし、学内での評判も悪くない。」
リオの口調は変わらないまま続く。
「それに、今のところ他の事務所と契約していない。こちらとしても動きやすい。」
「……」
現実的すぎて、むしろちょっと引くレベル。
「で、男主役はもう決まってるの？」
彼女は話題を切り替えた。
「いや、まだ候補を探してる段階だ。」
「だったら……」
リナはふっと笑い、冗談めかして言った。
「いっそ、あんたがやれば？」
ほんの軽口のつもりだった――が、
「それもありだな。」
リオは真剣な表情でうなずいた。
「見た目のイメージには合っているし、君が問題なければ、モデル代も浮く。」
「はぁ！？本気で言ってるの！？」
「何か問題でも？」
「い、いえ……別に。」
リナは慌てて首を振ったが、心の中では急速に状況を整理し始めていた。
――これって、もしかして、チャンス？
リオの態度は、あくまで仕事としての合理性に基づいているように見える。
けれど、もし彼がただの軽薄な男で、彼女の見た目に惹かれているだけなら、即座に見抜いて切り捨ててやればいい。
逆に、もし本当に誠実で、何か信じられるものを持っているのなら――
彼と組むことは、彼女にとっても大きな前進になるかもしれない。
リナは静かに微笑んだ。
「わかった、やってみる。」
こうして、彼女は“謎の男”との共演に、一歩踏み出すことになった。

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