ドラゴン、いい奴だった
4.(今回)ドラゴン、いい奴だった
「……久しぶりの客人だな」
低く響く声に、思わず息を呑む。
「そんなに緊張せずともよい」――どう見ても油断させる気しかしない。
でも、逃げたら終わりだ。私はじっとドラゴンを見返した。
「わしはこの地の番人じゃ。おぬし、あの扉を見たか?」
こくり、と頷く。
「では問おう。扉の向こうへ行く気はあるか?」
扉の向こう――その言葉に胸がざわつく。
「……そこに何があるの?」
思わず聞き返すと、ドラゴンは小さく笑った。
「それを知らずに来たのか。まあよい。行けば分かる」
やっぱりそういうやつか、と内心で肩をすくめる。
「扉、開かなかったんだけど。それ、鍵でしょ?」
視線を水晶に向ける。するとドラゴンは、ゆっくりと首を縦に振った。
「わしを見て逃げぬ者は久しい。おぬしは合格じゃ」
次の瞬間、その巨大な手が差し出される。そこには、あの八角形の水晶が静かに輝いていた。
「持っていくがよい」
一瞬ためらい、それでも私は手を伸ばす。指先に触れた水晶は、温かく脈打つように光っていた――まるで、これからの運命を示すかのように。
過去作も物語を当ててみました。
1.遺跡発見
https://www.chichi-pui.com/posts/ca6572ec-05db-40cc-a3ea-5a03a729d03c/
ジャングルの奥深く、湿った空気の中で私は足を止めた。目の前にそびえるのは、岩山を削り出したような巨大な神殿遺跡。蔦に覆われながらも、その威厳はまったく失われていない。
「おお……これは、宝のにおいがする」
思わずつぶやく。金はない、仲間もいない。だけど、その分取り分は全部私のものだ。胸の奥で期待と不安が入り混じる。こういう場所には、大抵お宝と同じくらい厄介な仕掛けや番人がいるものだ。でも引き返す理由にはならない。
むしろ燃える。
私は帽子を押さえ、腰の剣を軽く叩くと、薄暗い入口へと一歩踏み出した。奥から流れてくるひんやりとした空気が、これから始まる冒険を告げていた。
2.扉発見
https://www.chichi-pui.com/posts/ffefd615-adf9-4606-bc89-3b39e3c0f4d8/
遺跡の奥へ進むと、いくつもの洞窟が口を開けていた。少し迷ったけど、
「まあ時間はあるしね」
と肩をすくめ、私は中央の洞窟を選ぶ。
こういう時、真ん中が“当たり”って相場が決まってる。しばらく進むと、視界が一気に開けた。思わず息をのむ。天井には無数の光――まるで星空が閉じ込められているみたいに、洞窟全体が淡く輝いていた。
その中心に、黒い岩でできた巨大な扉が鎮座している。表面にはびっしりと古代語のような文字。
「……この扉は!」
思わず声が漏れる。いかにも“当たり”っぽいじゃないか。にやりと笑って手をかけるが、押しても引いてもまったく動かない。
「うそでしょ、びくともしないんだけど……」
眉をひそめる。
仕方なく文字を眺めるけど、さっぱり読めない。そんなとき、視線が扉の中央に吸い寄せられた。
ぽっかりと空いた八角形の穴。
「……なるほどね。これは鍵が必要ってわけか」
私はランタンを掲げながら、小さくつぶやいた。
3.ドラゴンに遭遇
https://www.chichi-pui.com/posts/66e53bf7-62ec-4864-8a3e-95a3e214e14c/
周囲を見回しても鍵らしきものは見当たらない。
「仕方ない、いったん戻るか……」
小さくため息をつき、来た道を引き返す。
次に選んだのは右端の洞窟。少し進むと、再び大きな空間へと出た。
中央には古びた宝箱、そしてその手前には――淡く光る八角形の水晶。
「……ビンゴ、ってやつ?」
思わず口元が緩む。さっきの扉の穴とぴったり同じ形。これが鍵で間違いない。
警戒もそこそこに、一歩、また一歩と近づく。宝と鍵が同時に手に入るなんて、今日はついてる。そう思った、その瞬間だった。
ふと、違和感に気づいて顔を上げる。
「――あっ」
視線の先、暗闇の奥でゆっくりと開く金色の瞳。巨大な影が、静かに息をしている。翼、鱗、鋭い牙――どう見ても、ドラゴンだ。完全に、縄張りのど真ん中に踏み込んでいた。
「……やっちゃったな、これ」
宝に気を取られて、警戒を怠った自分に内心で悪態をつく。けれど今さら後戻りはできない。ドラゴンの唸りが低く響く中、私はじり、と剣の柄に手をかけた。
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