アヤナギ荘の日常 #40 -Everyday Ayanagiso-
街の空気はじりじりと焼けつくように熱く、
アスファルトの上では揺らめく陽炎が踊っていた。
「あーもーダメ。ウチ、暑さで死んじゃう……」
ラウルがうなだれて詩温に抱きつきながら呟く。
そして詩温は
うっとうしそうにしながら一つ提案をする。
「それじゃあ、
涼しくなれるところへ行きましょうか?」
「え、いいじゃん! カフェ?
それとも映画館? 冷房ガンガンなとこ希望!」
「お化け屋敷です」
その一言に、ラウルは凍りつく。
「……え、マジ?」
「夏の風物詩ですから」
「いやいやいや、それ絶対ウチ泣くし!?
怖いのほんと無理だから!」
言葉とは裏腹に、
詩温の「大丈夫ですよ、私が一緒ですから」という
微笑みに押され、結局ラウルは渋々頷いてしまった。
夕暮れ時、二人はお化け屋敷の入口へと立っていた。
暗い幕の向こうから、奇妙な笑い声が響いてくる。
「うわぁ……もう入口から雰囲気ヤバいんだけど。
ねぇ、今ならまだ引き返せるよね?」
「ほら、行きますよ」
詩温に手を引かれ、
ラウルはしぶしぶ足を踏み入れる。
中は薄暗く、冷気が足元を撫で、
どこからか「すすり泣き」が響いた。
「ねぇ、今の……聞いた?
絶対スタッフの演技とかじゃないやつだよね!?」
「演出ですよ。たぶん」
「“たぶん”って何!? 断言してよぉ!」
そう言った瞬間、
壁の隙間から血まみれの手が飛び出す。
「ぎゃあああああああっ!!??」
腰を抜かし、
半べそをかきながらラウルは詩温にしがみつく。
「むりむりむり! 心臓止まるってば!
詩温ちゃん、離れないでぇぇぇ!」
詩温は小さく溜息をつきながらも、
その肩をそっと抱きとめる。
「……想像以上に怖がりですね、ラウル先輩」
「怖いもんは怖いの!!」
お化け屋敷の中、夏の夜に響くのは、
悪魔少女の情けない悲鳴であった。
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