100話達成記念!ちちぷい先行公開!
とうとう、カクヨムで小説執筆始めて3ヶ月半過ぎましたが
明日、100話目が公開となりますー♪ヾ(˙❥˙)ノ
ナノで、お世話になっているちちぷいのにて♪先行公開しちゃいます☆
下記からです〜♪ 幸登場が、まさかの100話記念とは!
〜〜〜〜(ΦωΦ)ノシΣ)・ิω・ิ)〜〜〜〜
4月10日、水曜日。
入学式を前に、自分がこれから学ぶ教室の席に座って、担任の先生の紹介と挨拶を聞いていたけれど、私はどうにも落ち着かなかった。
袖を通したばかりの新しい制服は、まだ肌になじまず、触れるたびにちくちくと違和感がある……。
福岡国立・山王(さんおう)女子中等学校の指定制服は、伝統あるセーラー服らしい。私にとっては、生まれて初めて着る制服……。
襟元のセーラー襟ってやつも、うなじにツンツン当たって、ちょっと気になる……
美しい春の日差しが差し込む教室は、とても明るくて、壁や天井は陶磁器のように白い。
床はベージュ色で、塗装も均一。滑りにくい素材なのか、キュっとした踏み心地がある。
それらは傷一つない、清潔な空間だった。廊下も同じように整えられている。
全て木造作りだった、地元の小学校と比べると、まるで異世界だ……
そして……周りの席に座っているのは、きっと同級生たち……だよね?
明らかに私とは……容姿のレベルが全然ちがうよ?
みんなモデルみたいに綺麗だし、亜人種の子たちもすごく美人……制服が完璧に似合ってる。
これが、福岡の《一流中学校》ってやつ……?
地方出身の私、ここでやっていけるのかなぁ……不安しかない……
今年の新入生の学年カラーは、「薄いピンク」に決定されていて、桜の花びらのような、やさしいピンクの綺麗な生地で仕立てられたセーラー服。
すごく、可愛い。こんな制服が、世の中にあるのに驚いた。
そして、セーラー襟は、水面みたいに淡い青色で、そこに白いラインが二本……。斬新なデザインって、こういう事なのかな?
加えて、スカーフは、ものすごく鮮やかな赤。まるで情熱そのものを色にしたみたい。初めて見た時、鮮やかすぎて、触るのももったいなく感じた。
ボトムは深い紺色のプリーツスカート。黒革のパンプスまで履いてて……
そんな、すごい制服を着ている、今の自分の姿に、頭がついて行けない。
この姿の私は誰なのだろう? ゲシュタルト崩壊してしまいそうになる。
* * * *
そんな都会の制服を着ることになるなんて……あの時は思いもしなかった。
片田舎、東峰村(とうほうむら)の小学校から、勧められるまま、この中学の「特色化選抜試験」に一か八かで挑戦して――
そうしたら……私……受かっちゃった。人生の運を使い果たしちゃった?
合格の報せを受けたとき、小石原峠(こいしわらとうげ)で陶工(とうこう)をしているお父さんは、号泣しながら大喜びして、私をこの学び舎に送り出してくれた。
お母さんも涙を流しながら、引っ込み思案な私の背中をそっと押してくれた。
『立派な人材になって、故郷に錦を飾っておくれ……でも、無理はしないでね。いつでも帰っておいで』
――優しい声だったけど……目が怖かったよ?
博多に向かうときも、村の人たちが大勢集まって見送ってくれて……逃げ場を失った気持ち。
私の名前は、文武野 幸(もぶの ゆき)。
今年から、都会の中学校に通うことになった、ただの田舎娘です。
* * * *
教室から体育館へと移動した私たち新入生。
移動途中も、何もかも、今までの世界観と違っていて、困惑はぬぐえないままだ。
そして、体育館に入った後も、私の《異世界》は、まだまだ終わらなかった。
ここは本当に体育館? ……なの?
目の前に広がっていたのは、《アリーナ席》というものらしい。初めて見たのでなんと言えばいいのか……
ステージを中心に眺められるように、扇状に広がった席は、階段状に固定されていた。
折り畳み式のようで……椅子を座れる位置に下して座るようだ。
座ってみると……ふかふかの座り心地……木椅子に慣れていた私は、こんな椅子があったの? と、また困惑する。
都会の設備って、どうなってるの?
ずっと圧倒されっぱなしで……息をするのも忘れそうになる。
しかも私は、いわゆる《地味子》なのだ。
髪も赤寄りの茶色くて、髪の手入れが苦手で、いつも片目が前髪で隠れていて目立たない。
背も小さめ、表情も薄いってよく言われる。
自分でも「華がない」って思うくらいで、周囲のキラキラした同級生たちの中では、本当に影のような存在。
ここで……私が「新入生」として迎えられるんだ。
場違い感でいっぱいの心をどうにか抑えるように、私は制服のスカーフをそっと握りしめた。
* * * *
式は着々と進んでいく。
新入生を歓迎する先生のスピーチはとても優しくて、時折ユーモアも交えていて、ぜんぜん退屈しなかった。
両隣の同級生は、控えめに笑ったりしていた。二人とも、すごい美人……
すると突然、右となりのが、私に話しかけてきた。
「ねえ、あなた、どこから来たの?」
突然の質問に、私はキョドってしまった。とても綺麗な瞳……睫毛長い! お肌整ってて…
何か、返事しなきゃ! ええと……
「あ……わ、わたしは……こ、東峰村から来ました」
「え~! どこそれ? 初めて聞いたっちゃけど?」
な! うーん、なんて答えればいいのかな?
ここからだと……かなり遠いよね?
「えっと……ここからずっと東の山の中にある……の。陶芸家が住んでる村で……。窯元で陶器を作ってるところなんだけど……」
これで通じるかなぁ? 心臓ドキドキさせながら、何とか伝えれたと思う。
すると、反対側の子――牛の亜人種の女の子が、目をキラキラさせながら話に食いついてきた。
「え!? それって、あの超古代の時代、伝説陶芸家たちが作っていた『小石原焼き』の村!? すごっ、あなた、そのご子孫!?」
「あ……はい、父が陶工をしてまして……その、窯元を営んでいるんですけど……?」
説明を終えると、亜人種の子は、私の手を取って、目を輝かせながら、嬉しそうに話してくれた。
「アーシん家、その『小石原焼き』の食器、使いよーんよ♪ エネルギッシュで、すごく丈夫で、アーシんママはリピーターなんばい♪」
えっと……この人、話にぐいぐい入ってくる。でも……なんか、村の特産品を使ってもらえてるのが、すごくうれしい。
二人ともすごく綺麗で、都会っ子なのに、こんな《地味子》の私にも、ちゃんと話しかけてくれる。
思ったより優しい人たち……構えてしまって、申し訳ない気持ちになる。
それにしても、福岡では、私たちが普段使っている『小石原焼き』が、そんな高評価とは、少しも思わなかった。
――すると、そのとき。
「しーっ、静かに~。式の最中ですよ?」
穏やかながらもピシッとした注意が、後ろに座っている生徒から飛んできた。
私がびくっとすると、両隣の二人は同時に後ろを向いて、小さく笑いながら、
「メンゴ☆」とぺこり。
それから私の方を見て、「ごめんね、話しかけちゃって。これからもよろしくね♪」とにこっと微笑んで前を向き直った。
……うん。いい人たち、確定だ。
つい、口元がほころんでしまう。
そのとき、場内がざわ……と、わずかにざわついた?
なんだろう……空気がふっと変わった気がした。
えっ、何? 何が起きるの……?
そんな中、司会の先生が、とても澄んだ声で次の進行を告げた。
「生徒代表挨拶――生徒代表、桜豊湖 葵(おうでこ あおい)さん!」
その名が呼ばれた瞬間、場内の空気がピンと張りつめた。
呪文
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