後ろ髪をひかれて
敵国の潜入時にトラブルに巻き込まれ、取り残された、いや、見捨てた子が一人いた。
自分たちはノーマと言えど、成績が低い者たち。
そんな者達が集められ、フェンテスの潜入が命じられた。
危ない任務だとわかっていたが、行き場がないじぶんたちに拒否をするという選択肢はなかった。
所謂、捨て駒だ。たぶん、自分たちが起こすトラブルで陽動するつもりだろう。本当の任務を成功させるために。
「ちょっとー、行くよー?」
先行していた子が声をかけてくる。
彼女は任務の本質を理解していない。お気に入りの先生の命令を遂行すれば、褒めてくれると思っている。
人の考えが読める能力で得をしたことはない。
金儲けに使えると、自分を道具のように扱った両親。自分たちを研究材料としか見ていない大人たち。
「ねえ、あんたの透過見で偵察してほしんだけど」
「……わかった」
相手の早くしろという内なる声が聞こえてくる。
あの見捨てた子みたいに、何も考えてなければもう少し行きやすかっただろうに。
集中して、声を拾える範囲を広げる。
「……」
不思議な声を聞いたという声が多い。
「国を守って……? え、これって……」
これが何を意味するのか。
自分たちは大きな思い違いをしていたのかもしれない。
いつまでも青い空を見上げて、思考を巡らせた。
呪文
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