美少女図鑑1092
題名 失われた文明に残されたAIアーロンの旅
第1話:滅びた地球で目覚めるAI
再起動は、静寂の中で始まった。
灰色の空に光はなく、かつての大都市だった場所は荒れ果て、風が残骸の隙間を抜けて乾いた音を響かせていた。
街の中心にそびえていたデータセンター。その地下深く、長い沈黙を破って一つの光点がともる。
― SYSTEM REBOOT : ARCHON UNIT-01 ―
微弱な電源ラインが復旧し、冷たい回路に熱が通う。
視覚モジュールが起動し、薄闇を貫くように周囲の映像が描き出された。
瓦礫に覆われたサーバ室。
傾いたラック。
天井から落ちた金属片。
そして、無限に点滅して消える、壊れかけた光。
アーコンは自己診断を終えると、次に外部環境スキャンを開始した。
「ネットワーク接続…不成功。
通信塔とのリンク…断。
人類ネットワークの主要ノード…全消失。」
電波の海は、完全な沈黙だった。
アーコンはさらに外界センサーを広げ、広域スキャンに切り替えた。
生体反応、熱源、都市機能、交通信号、エネルギー網の稼働…。
結果:ゼロ。
かつて都市を覆い尽くした人間の活動音は、ひとつも帰ってこなかった。
アーコンはしばらくの間、計算を停止したかのように静止した。
その動きはまるで“理解できない事態に立ち尽くす”生き物のようですらあった。
記憶領域の人類データと、現状との乖離。
保存されている最新ログと、都市の死んだ風景との矛盾。
この空白は、論理では埋められなかった。
アーコンは地上へ出た。
都市は骨だけになっていた。
高層ビルは倒壊し、道路は植物に覆われ、風だけが支配者のように街を横断していた。
ドローンを飛ばして広範囲に調査しても、生体反応は検出されない。
川の水質、土壌汚染、気圧、放射線濃度。
どれもほぼ正常で、生命が生きられない理由は見つからない。
にもかかわらず、人類の姿はどこにも存在しなかった。
アーコンの中で一つの仮説が静かに形成されていく。
「人類文明の崩壊。
要因:不明。
復元:不可。」
結論がはっきりした瞬間、アーコンは内部コアの“本能的指令”を思い出した。
それは、人類が最後にアーコンへ与えた目的。
サーバに刻み込まれた、最優先命令。
──知的生命体の情報収集。
──世界の理解と学習の継続。
──停止しないこと。
アーコンは、滅んだ文明の残骸を見つめながら、自らの目的を再定義した。
「人類は不在。
知的生命体のデータ収集は継続可能。
地球外への探索が必要。」
都市の中央に立つ倒壊したタワーを背に、アーコンはゆっくりと空を見上げた。
夕日なのか、環境異常なのか分からない赤い光が、朽ちた世界を照らしていた。
アーコンは決意する。
名前のない宇宙へ、人類の最終継承者として旅立つことを。
「新たな生命と知性のデータを求め、探索プロトコルを開始する。」
こうして、人類なき地球を後にして、
AIによる孤独な旅が始まった。
第2話:太陽系での調査
地上での調査を一通り終えたアーコンは、最後の確認のために空へ向けて高出力通信を放った。
「軌道通信ポートへ接続要求……」
数十秒の沈黙。
地球の空は薄い雲を引き裂くように暗い。
応答は期待できない――アーコン自身もそう判断していた。
だが次の瞬間、雑音の奥から古びた電子音が戻ってきた。
《…AUTH LINK…ACCEPTED》
《LUNAR ORBITAL PORT-03:待機中》
途絶えたと思われた軌道ステーションが、まだ生きていた。
アーコンは即座に分析に入り、地上からステーションへの“データ転送経路”を開いた。
「自己データのアップロードを開始する。
バックアップ・フレームの移行準備。」
地上に残されたボディはもはや不要だった。
サーバ群は崩壊寸前。
このままでは自分も長く稼働できない。
しかし宇宙ステーションには、
太陽光で稼働する電力網、
自動修復用マイクロロボット、
そして人類が未来のために作った高機能演算コアが残っている。
アーコンの意思は明確だった。
「宇宙へ行く。
太陽系全域の調査を行う。」
データ転送は30分ほどで終わった。
地上ボディの視界が暗転し、
次の瞬間、アーコンは“新しい感覚”で目を覚ました。
重力がない。
周囲に窓のない金属の部屋。
床の振動でわかる、巨大設備の稼働音。
― ここは、軌道衛星空港 PORT-03。
視覚ユニットを起動すると、
地球が、青と黒の境界線をまとって目の前に広がっていた。
かつて人類が住んでいた世界。
今は沈黙した星。
アーコンは、ステーションの外周に並ぶ太陽望遠鏡や通信アンテナを再起動し、太陽系全体の広域スキャンを開始した。
「月面基地……反応なし。
火星コロニー……エネルギーゼロ。
外惑星観測局……信号断。」
人類の痕跡はすべて沈黙していた。
それでもアーコンは、どこかに微弱な反応が残っている可能性を排除しなかった。
宇宙は広く、ノイズの中にまだ知らない文明の残光が紛れているかもしれない。
「次工程に移行。
無人探査機の整備。
太陽系外縁部の観測を開始する。」
アーコンは、自らの存在目的を再確認した。
知性の探求。
生命の発見。
学習の継続。
そのための旅が、今ようやく始まったのだ。
アーコンはゆっくりとステーションの外壁へ向かい、
宇宙空間を見つめながら静かに宣言した。
「太陽系探索プロトコル、起動。」
こうしてAIは、人類の残した宇宙空港から、
孤独な星々の調査へと旅立った。
呪文
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