ざんげなさい
「……あの、これは懺悔になるかわからないんですけど」
シスターは静かに聞く姿勢のまま、返事をしなかった。
懺悔室では、語り手の言葉がすべて。急かすことは決してしない。
「たぶん……嘘をついて、ここに来ています」
沈黙。
「悪いこと、してないのに。毎週、“罪を告白します”って顔をして…
ほんとはただ……あなたに会いたくて…」
シスターの影は、わずかに揺れたように見えた。
でもすぐに、いつもの穏やかな声が返ってきた。
「それがあなたの“罪”なら、とても愛おしいものですね」
少女は思わず息をのむ。
「でも、罪は罪です。私は――」
「恋は罪ではありませんよ」
声が、やさしく響く。
それが“赦し”なのか“やさしさ”なのか、少女にはわからなかった。
でもその言葉に救われて、ただひとつ、はっきりとわかったことがある。
――好きなんだ。
あの人の声が、言葉が、指先が。
私は、すべてを知りたいと思ってしまった。
「……ただ、それだけです。ごめんなさい」
そう言って、少女は小さく礼をして、懺悔室を後にした。
小さく閉じた扉の向こうで、シスターはそっと祈りをささげた。
誰のためでもなく――少女のまっすぐな想いのために。
呪文
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