【マタタビ】23.復活の儀式
【マタタビ】22.越夜隊の修道女
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俺は、フィズィと対峙しながら、話を続ける。
「儀式とは何だ? 神の繭に何をしている?」
「いいでしょう。儀式にはもう少し時間がかかりますし、少しお話しましょうか」
フィズィは、世間話をするように話し始める。悔しいが、こちらを全く危険視していないのだろう。
「宇宙ステーションと共にこの座標に落下してきた神の繭は、数十年もの長い間、この場所に放置されていました。神の繭が持つ本来の輝きは失われ、ここにあるのは言わば、成れの果てです。そんな神の繭が力を取り戻すためには、何が必要だと思いますか?」
「猫の俺には分からないな」
俺が、ぶっきらぼうに答えると、フィズィは、物分かりの悪い子供に教えるように、丁寧な口調で説明を続ける。
「生贄ですよ。復活のためには、エネルギーが必要なのです」
俺は、それを聞いてゾッとした。神の繭を復活させるのに、一体どれほどの生贄が必要なのか。フィズィは、神の繭の方へ手を向ける。
「見てください。こちらが今の神の繭の姿です。ルースト005で見た写真よりも、ずっと大きくなっているでしょう? 私たち越夜隊が儀式を始めてから、数時間が経っています。その間に、生贄を沢山捧げたのですよ」
ニューナゴヤに存在し、エネルギーを持つ沢山の生贄。それはつまり——。
「人間を……生贄にしたのか?」
「はい、正解です」
フィズィは、よくできました、と言わんばかりに拍手をする。
「一体、何人の人間を生贄にしたんだ?」
「そうですね……数えてはいませんが、この辺りで見つけた人間やシンカロン、ざっと100人程度でしょうか?」
この辺りは廃墟になっていて、人が暮らしていないものだと思い込んでいたが、そうではなかった。ここの住人たちは、既に神の繭に取り込まれてしまっていたのか。
「神の繭から触手が伸びているでしょう? あの触手で生贄を捕らえてエネルギーを吸収し、あんなに大きくなったのですよ」
まるで、生き物を観察し、育てているような口ぶりで、嬉しそうに話す。こいつは、人の命を何とも思っていないようだ。
「シロを、神の繭の生贄にするつもりか!」
俺は、フィズィに向かって叫んだ。だが、フィズィはそれを否定した。
「いいえ」
そして、更に恐ろしい答えを返してきた。
「その子だけではありません。生贄にするのは、ニューナゴヤにいる者たち、全員ですよ」
そう言って、フィズィは冷酷に笑った。
「ニューナゴヤには、今なお数万人規模の人間が暮らしています。それに加えて、星の樹の噂話に引き寄せられ旅人や黄昏梟など、沢山の方々がこのニューナゴヤに集まってくれました。そのすべてを取り込めば、神の繭は十分なエネルギーを得て、復活することができるでしょう!」
フィズィは、恍惚とした表情を浮かべながら、両手を広げる。
「そして完全復活した神は、この世界に真なる滅びをもたらし、私たちを新たな世界に導いてくださるのです!」
神の繭に目をやると、先ほどよりもさらに大きくなっていた。今なお、その触手から生贄を取り込んでいるのだろう。だが、俺はその様子を黙って見ていることしかできなかった。越夜隊の狙いを知ったところで、俺にできることはほとんどない。俺にできるのは、せいぜいシロ一人を助けることぐらいだ。
俺は、そう割り切ると、フィズィに背を向け、空中に浮かぶ眼球に飛びかかった。眼球は、こちらに目をやり、空中で俺の突進をかわす。だが、それで十分だ。
「動けるか? シロ」
「うん」
思ったとおり、眼球の視線をそらせば、シロにかかっていた金縛りは解けた。
「急げ、シロ! この場から逃げるぞ!」
儀式は始まっている。神の繭に近づけば、その触手に巻き取られ養分にされてしまうだろう。俺たちにできることは、ただ、逃げることだけだ。生き延びるために。
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(次の話)
【マタタビ】24.グリルスの願い
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