本日のランチ
『食彩探訪』11月号特集
「11月12日 甘酢とタルタルが奏でる、幸福のハーモニー──鶏の南蛮定食」
文・撮影:田嶋 達郎(グルメ記者)
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昼どきの陽がやわらかく差し込む店内に、カラリと油の香ばしい音が響く。
この日の定食は、人気の鶏の南蛮定食。
運ばれてきた瞬間、ふわりと立つ甘酢の香りに食欲が一気に引き寄せられる。
黄金色の衣に包まれた鶏肉は、箸を入れるとサクッと心地よい音。中からは湯気とともに肉汁がじんわりと溢れ出す。そこに甘酢ダレの酸味と甘みが絡み、仕上げの自家製タルタルソースがまろやかに包み込む。ひと口食べれば、酸味・甘味・旨味が三重奏のように広がり、思わず頬がゆるむ。
添えられた千切りキャベツはシャキシャキと軽やかで、レモンをひと絞りすれば味わいが一変。
味噌汁はほっとする優しさで、鶏のコクをきれいに締めてくれる。
そして、ほんの少しの漬物が、白ごはんの甘みを引き立てる隠れた名脇役だ。
外は寒くなり始めたが、この一皿の温もりが心の底まで染み渡る。
食後、ふとカウンター越しに「今日もうまかった」と呟く常連の声が聞こえた。
──ああ、この定食には、人を笑顔にする魔法がある。
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次回(11月13日)は、やさしい出汁が染みる「肉じゃが定食」。
“湯気のある幸せ”を求めて、また暖簾をくぐる。
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