小説『レトロエポック27を見るギブソン娘』【ニャンノ世界】
『レトロエポック27を見るギブソン娘』
ドラマや映画を見るうえで
欠かさないのがテレビ
しかして、そのテレビには
レトロさが存在することで
モダンを認識する。
アゴニー・ギブソンは
山盛りのポップコーンと
2杯のコーラをトレイに乗せ、
馴染み深い木製のテーブル
の上に起き、ソファに座る。
革製のソファは、何年経ったのか
思えば、歴史を感じさせ、
其所にはドラマすらもあるのではないかと思うのだった。
機械に任せるよりも人の手で運ぶ方が、ドラマというものがあってよいのだと、
アゴニーは思いつつ…
あの日見た夢に関することに
思いを馳せながら
娘のアシュリー・ギブソンと共に
映画あるいはドラマの『レトロエポック27』を見る。
此は確信的なまでに便利な技術〈エーアイシンクシステム〉に懐疑的な若者達の葛藤と苦悩がテーマとなった作品で、夜になると〈システムの扉〉が開き、人々が失踪するのだというのを知り、
若者達は〈エーアイシンクシステム〉を通じて〈イデアルタワー〉の奥底あるいは頂上に隠される、
秘密を探るというものであった。
「父さん、この制作に携わってたよね」
「あぁ、まぁね…考えたアイデアは不採用だったりしたけど…えへへ」
「父さんは、アイデアマンなところがあって凄いよ!」
「えっ、そうかい、嬉しいな」
子に褒められて喜ばない親がいるだろうかとなる位に、アゴニーは自分の子供が愛しいと感じている。
「そういえば、お父さん」
「ん、なんだい、アシュリー」
「奇妙な夢を見たのって実話だよね」
「まぁね、ちょうどレトロエピック27と似たような世界が夢に出てきてね」
アゴニーは奇妙な夢を見た、
レトロエポック27と異なるのは
近未来的というよりは中世ファンタジーであったことだろう。
映画あるいはドラマを見る
この時間が至福の時であり、
偉業よりも高潔さよりも
大切なものは日常なのだと
映画を見て、日々を感じつつ…
呪文
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