本日のランチ
『食彩探訪』11月号特集
「11月21日 澄んだ一杯が、まっすぐ心に届く──鶏塩ラーメンセット」
文・撮影:田嶋 達郎(グルメ記者)
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冬の気配が深まりつつある昼どき。
外の空気が少し冷たいぶん、店の暖かな湯気が、ひときわありがたく感じられた。
この日のランチは、身体の芯から“整えてくれる”ような一杯──鶏塩ラーメンセット。
まず目を奪われるのは、スープの澄み切った美しさだ。
淡い黄金色の表面に、鶏油がきらりと光り、ほんのりと立つ湯気が食欲を誘う。
レンゲを沈めれば、出汁の香りがふわりと鼻をくすぐり、
ひと口飲めば、思わず「うまい」と声が漏れそうなほど、やさしいのに深い。
鶏チャーシューはしっとりとして上品な旨み。
小松菜の青い香りが、冬の空気を思わせる爽やかさを添え、
細めの麺はスープをしっかりとまといながら、つるりと喉を滑っていく。
派手ではない。
しかし、その控えめな旨さが、じんわりと心に染みる。
セットの半チャーハンは、ラーメンを邪魔しない控えめな味付け。
米粒がほどよくほぐれ、鶏塩スープの余韻と共鳴する。
冷奴はすっきりとした口あたりで、箸休めにちょうどいい。
そして小鉢の野菜炒めがまた嬉しい存在だ。
香ばしく炒められた野菜の甘みが、ラーメンの軽やかさをそっと支えてくれる。
寒い日の昼食に、こんなにも心強い一杯があるだろうか。
湯気の向こうで揺れる麺をすくい上げながら、
「これはまた食べに来たくなる味だ」と、自然と思っていた。
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◆次回予告
11月22日:熱々の“カキフライ定食”が登場予定。
サクッと衣がはじける、冬の海の幸をお届けします。
──今日も、いい一杯だった。
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