エンブリスの金球(キンタマ)
午前の陽がエーゲ海に反射し、白い石畳の上に黄金の波紋を踊らせていた。
アテナイの外港、アナクソス市場には、今日も人々の喧騒と潮の香りが立ち込めている。
商人たちの声が交差するなか、ひときわ異様な空気を放つ屋台があった。
大理石の台座に並ぶ、無数の“キンタマ”。大きさは手のひらほど。
だがそれぞれが微かに輝き、まるで呼吸しているように見える。
「これはな、神の息子が落とした涙なのだよ」
老商人が笑う。
「持ち帰るなとは言わぬが、夜に開けてはならぬ。光が狂うからな」
💠 キンタマとは何か?
・一説には、アポロン神殿の地下から掘り出された“天体の残滓”
・他説では、星読み師が“未来の記憶”を封じた卵
・子供の中には、耳を近づけると「音楽」が聴こえると言う者もいる
「このタマ、家に持ち帰ったら……夜ごと部屋が明るくなるんです。蝋燭なしで」
旅人が震えながらそう呟いたという記録が、書板に残る。
🛒 取引と禁止事項
1.キンタマは真円でなければ売ってはならない
2.音を出すものと交換してはならない(音叉、笛など)
3.落として割れた場合、周囲の者全員が過去を失うという伝承あり
🎭 伝承の中の逸話
「あの夜、港にキンタマがひとつ転がってきた。
船乗りのひとりが拾って、それを抱いて眠った。
翌朝、彼の船は出航しなかった。彼は言ったのだ――」
「**“もうすべて見た。帰る場所がわからない”**と。」
🧭 結末への導き
ある日、若き哲学者がタマを割ってしまう。
彼は「昼と夜の区別がつかなくなった」と語り始め、周囲の人々は彼の言葉を記録し続ける。
それらの文献はのちに「キュリオス写本」と呼ばれ、時の概念の再構築をめぐる議論の原典となる――
呪文
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