ひよこの串焼き屋さん
その声は、小さくて、あたたかくて、なんだか安心する。
森の小道を抜けた先に、ぽつんと立つ小さな屋台。
看板には、手描きのひらがなでこう書いてある。
「だいずみーと くしやき やさん」
屋台の奥から、ひよこの店員さんが登場した。
黄色くてふわふわで、小さな翼で一生懸命、串をくるくる回している。
「きょうのおすすめは、みそだれとハーブしおですよ、ピヨ!」
香ばしい匂いがふわりと風に乗って、思わずお腹が鳴る。
じっくり焼かれた大豆ミートの串は、カリッと香ばしく、でも中はふっくら。
ひとくち頬ばれば、あまりの美味しさに目を見開く。
「……えっ、これ本当にお肉じゃないの?」
ひよこの店員さんは、誇らしげに胸を張る(小さくピコッと動いただけだったけど)。
「だいずさんは、とってもがんばりやさんなんです! おにくじゃないけど、まけないくらいおいしいんですよ!」
横の小瓶には、自家製のごまだれや柚子胡椒。
全部、みんなが毎朝こしらえているらしい。
食べ終わった帰り道、ほんのり甘くて香ばしい余韻が残る。
どこか体にも心にも、やさしい気持ちが広がっていく。
また来よう。あのひよこ達と、やさしい串焼きに会いに。
呪文
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