メタルスーツ
衣装合わせで渡されたのはえらく本格的な造りのボディスーツとアーマーだった。随分細かいところまで採寸されたと言っていたがこのデザインなら納得だ。さて、監督は彼女にこの衣装でどんな役を演じろと言うのか。
監督は衣装を着た彼女を見てこちらが軽く引くほどの熱っぽさで彼女を褒めちぎり、作品へのこだわり、そしてなぜ彼女をキャスティングしたのかを長々と語った。監督の話によれば彼女を選んだのは趣味でも誰かのゴリ押しでもなく監督自身が彼女の今までの出演作を見て作品と役のイメージにピッタリだと思ったからだという。そのこと自体はとても有難いのだが、問題はその後だった。
彼女の登場シーンは長くはないものの物語中盤のクライマックスとも言える場面で、その内容は落下や爆破ありのかなり激しいアクションシーンだという。監督の話を聞いて彼女の顔色がみるみる変わっていく。そりゃそうだ。彼女も芸能界に身を置き何本もの映画やドラマに出演してきた以上、スタントや特殊撮影の過酷さは身をもって知っている。おいおい、大丈夫か?これ本当にアイドルがやる役か?俺たちの不安をよそに監督の語りはどんどんヒートアップしていく。お願いだ!誰かこの男を止めてくれ!そしてこの別れ話…じゃない、危険極まりないオファーが冗談だと言ってくれ!
呪文
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