フェンテス・アイドル血風録⑥
ヒノイのとある学園の校庭に多数のドローンが飛来する。
すわ、フェンテスの攻撃かと色めき立つ人々を前に、ドローン群は変形・合体し大型の構造物を作り上げる。
その形状は……平たく言えば、ライブステージ。何故こんな物が? 怪訝な目で見つめる彼らを余所に、一人の少女がその上に立ち、歌い始めた。
唐突に始まったライブに、人々は戸惑いを隠せぬままその様子を見ていた。
時間は少々前後し……ヒノイに潜入したアイドルの少女は、その道程で奇妙なポスターを目にした。
それは国を超えた音楽イベントの開催を通知するものであり……少女は、自分と同じ考えを持つ者がいるのだと認識することができた。
そして、このイベントに自分も参加しようと決意した。ヒノイでのライブはその試金石であり、敵対している人々の心を動かすことができれば、世界中の人々にも感動を届けることができるはず……そう彼女は考えたのだった。
煌びやかなスポットライトを浴びながら彼女は歌い、踊る。兵士に勘違いされた際に得た権限を使い、大量のドローンを呼び寄せてはいるものの、それらに一切の武装は無い。
そして彼女もまた、ヒノイの人々のような異能を持ち合わせてはいないため、もし攻撃を受けたならひとたまりもないだろう。
だが、彼女は無防備な姿のままライブを続ける。いつしか変装も外し、汗をかきながらも笑顔で歌い踊り続ける。
……これで世界が劇的に変化するわけではないことは彼女も理解していた。しかし、人々が分かり合える一助となるべく彼女なりの『闘争』を続ける。
何故なら……彼女は『アイドル』なのだから。
次回: https://www.chichi-pui.com/posts/5d08745b-36a3-4593-8296-e99198007bc4/
※サトー様の『グランシュライブ!!!( https://www.chichi-pui.com/posts/afaeaa4a-cbb6-4cce-ac2b-b2df292b211c/ )』にインスパイアを受けております。
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