ローズドレス
その庭には、いつも美しい薔薇が咲いていた。
赤、白、ピンク、紫――無数の薔薇が風に揺れ、甘い香りを漂わせる。
少女は、その中で静かにしゃがみこみ、ひとつの薔薇を見つめていた。
「今日も綺麗ね」
そっと指先で花びらをなぞる。
柔らかく、繊細で、ほんの少しの力で崩れてしまいそうなほど儚い。
「ねえ、知ってる?」
彼女は薔薇に語りかけるように呟いた。
「薔薇の花言葉って、色ごとに違うんだって」
赤は「愛」、白は「純潔」、ピンクは「感謝」、紫は「誇り高き愛」――
そして、黒い薔薇は「決して叶わぬ恋」。
「私は、どの色が似合うのかな?」
誰に問うでもなく呟いた瞬間、風が吹いた。
ふわりと舞い上がる花びら。
そっと目を閉じ、風の中に包まれる。
それはまるで、誰かに優しく抱きしめられているような気がした。
「……ううん、きっと、まだ選べない」
少女はそっと薔薇を撫で、微笑んだ。
そして、今日もまた、薔薇の庭で静かに時を過ごすのだった。
呪文
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