濡施淫綴 壱
入り口をくぐると、いつもの声が柔らかく包み込んでくる。
小さく揺れたまつ毛の奥に、あの瞳があった。
大きく、湿り気を帯びたような、どこか媚びるような光を含んだ目。
しっとりとした唇、整った顎の輪郭、首筋に流れるひと筋の髪。
白い指が胸元で組まれると、その手の線すら、目が離せない。
「本日も、いつもの60分コースで承っております」
慣れた言葉、慣れたやり取り。
それなのに、彼女が差し出す手に触れただけで、胸の奥がざわめく。
施術着の下にある細い腰の感触を、布越しに夢想する。
ふと近づいた彼女の髪が肩に触れた瞬間、
まるで触れられたのは心そのものだったかのように──熱が走る。
指が滑るたび、呼吸が浅くなる。
言葉ではなく、肌を通して伝えられるなにか。
ふと目を閉じると、想像の奥で彼女の唇が微かに動く。
その舌先が、どこかをなぞるような、そんな幻が溶けていく。
いつか、その唇で。
迎えてもらえたら。
声ではなく、指先でもなく。
もっと深いところで、彼女の温度に包まれたい。
──その願いの奥で、いつも浮かぶ妄想がある。
「もし延長していただければ……特別な施術をさせていただきますが……」
「内緒にしてくださいね…?」
誰にも聞かれてはならない、甘く湿った囁き。
彼女の唇が、耳のすぐ傍で震える妄想を、
何度も、何度も、繰り返す。
その指が、そっと触れる。
私の猛り狂った昂ぶりに、迷いなく添えられる細い指。
滑るように、絡むように──ただの施術では終わらない温度。
触れたのは指先なのに、
触れられたのは、理性の奥。
妄想が脈を打ち、現実を濡らしていく。
そうしてまた、60分の扉をくぐる。
彼女が迎えるその一瞬に、
すべてを預けたくなるほどの、欲を隠して
濡施淫綴
呪文
入力なし