トム・コリンズ
「問題ないね。業務の棚卸したら、遥は私の店長業務をすでに結構な割合で手伝ってくれていたから・・・元々が実質的に副店長だったのを、肩書的にも変えたのようなものだから。」
「遥ちゃん、本当に努力家だねぇ。最初は「香澄に後輩が出来た」って聞いた時、またすぐ辞めるんじゃないかなって思ってたけど、入ってからの伸び凄まじいわ。傍から見てても思うもん。」
「遥はバイト時代から意識高いなと思ってたからね。言われた事すぐ覚えるのはもちろん、そこから自分の頭で考えて試行錯誤して失敗も成功も自分の糧にしていって・・・最初から本気だったのよね。」
「良かったねぇ。そんな凄い後輩出来て。プレッシャーにもなるだろうけど、美しき師弟関係かつライバル関係!って感じで見てて羨ましいよ。良いなぁ。無いものねだりだってのは分かってるけどねぇ・・・」
「凪咲のお仕事とは、やっぱり違うところある?」
「そうだねぇ。3年も働くと新入社員も入って来て、そこで「噓でしょ?」って感じることもあるなぁ。皆が皆そうじゃないし、私が新入社員の時は先輩から同じこと思われてたんだろうけどね。うちは大手だから入社したらゴールって思っちゃう人は一定数居る気がするよ。だから香澄と遥ちゃんみたいな関係、羨ましいんだ。」
「・・・これが励ましになるかは分からないけどさ、次の一杯、私に任せてもらってもいい?」
「お、香澄さんからのオススメ?もちろんいいよ!お任せするよ!」
「良かった。じゃあ少々お待ちください」
・・・(カクテル製作中)・・・
「お待たせしました。トム・コリンズです。」
「ここ、オールドトムジンあるもんね。じゃ一口。うん!流石、美味しい!ジン、レモンジュース、砂糖がちゃんと混ざってどれも特徴活きた上で、炭酸のシュワシュワ感が美味しいよね♪」
「良かった。シェークはもちろん、ステアとビルドの技法も入って来るから、バーテンダーの基礎が詰まってるとも言われているね。好みはあるけど、これが美味しくないと思うバーは、自分とは相性良くない可能性が高いんじゃないかな。」
「キリっとした口当たりと、ビターとレモンの風味が爽やかになるのは居酒屋さんだと難しいよね。ま、シェーク工程入る時点でほぼ居酒屋さんじゃ飲めないだろうけど。流石は香澄という洗練された味の感じだよ!『親友』の私が保証する!」
「やっぱり気付いてたのね、カクテル言葉。」
「そりゃ、あの会話の流れがあって、そこからジンフィズでも良いところをわざわざトム・コリンズにしてくれたらね♪そっか♪私のこと親友って思ってくれてたんだ♪」
「当然でしょ。もう何年一緒に仲良くしてると思ってるの。遥が大事な後輩で替えが効かないのは事実だけど、凪咲だって私にとっては替えが効かないの。二人がどっちが上とかじゃない。私にとって、本当に大切な二人。だから凪咲、改めてありがとう。」
「そ・・・そこまでハッキリ言われると照れるじゃないかぁ・・・でもそうだね。よし!ウダウダ悩むのは止めだ!こっちこそ、ありがとう香澄!私ももっともっと稼いで、もっともっとここにお金入れるぞ!」
「だからそう言うのじゃないんだけど・・・ま、そう言うところは凪咲らしいわね。」
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定期的にしおらしくなる凪咲さん、の巻。
友人が自分とはどこか遠くに行ってしまった気がする、というのは妙な焦りや落ち込みが発生しますね。ずっと大学まで同じで一番の親友が、急にバーテンダーという予想していない仕事を志した。凪咲さんは気が気じゃなかったでしょうね。
私も、友人や後輩が社会に揉まれて、自分では考えつかないような成長を見せてくれると嬉しくもあり、焦りや寂しさもあり・・・というような気持ちを思い出しながらキャプションを書いていました。
さて、トム・コリンズですね。
こちらはジン、レモンジュース、砂糖(シュガーシロップも可)をシェークした後にコリンズグラスに入れ、炭酸水で適量を満たして作るカクテルです。
カクテルに詳しい方だと「あれ?それジンフィズじゃないの?」と気付く方もいらっしゃるかと。ええ、大枠はジンフィズと同じなんです。
違いはオールド・トム・ジンというものを使うこと、ジンの分量が若干増えること、グラスにコリンズグラスを使うことの3点が主な違いです。ただ、どれもジンフィズと同じようにしてしまっても良いとされています。
オールド・トム・ジンはドライジンよりややお高いので、よほどこだわりが無ければジンフィズでも良いかな・・・(;^_^A
良心的なバーだと、値段が一緒かもしれないのでお試ししてみるのも良いかもしれませんね。
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