ドラセナ・メデテル『解放と崩壊』【トイレ文学】
ドラセナ・メデテルは思考に行き詰まると、西洋式庭園の如く、開放的なトイレで、尿と便を済ませる。
体の中に貯まったものが、鈍らせていたのだろう。まるで、足枷のごとき罪、この罪たるものが、内部に貯まっていた。
トイレとは、懺悔室たるもので、体の内部に貯まったものは、宗教的に解決ができないからこそ、設けられた聖なる場所だと、彼女は、用をたすことで気づくのであった。
トイレ、Toilet、WCなど、色んな言葉がある。
それだけ、人々にとって、重要かつ、なくてはならないもの、それは、お金をかけて建てたどんな豪華絢爛な宮殿よりも必要なことではないだろうか。
恐らく、これはヴィクニャリア宮殿よりも重要だった。ヴィクニャリア宮殿は、確かに綺麗ではあったが、トイレたるものがなかったことで、国は乱れてしまった。
革命たるはトイレなりか。
腐敗に対する抵抗は便器によって、秩序と人間たる猶予が設けられる。
トイレなくば、獣であり、人間的判断は望めない…
すなわち、トイレがなくなれば、獣になってしまう恐れを我々は抱いてるのか。
だからこそ、紛争たるものや争いは終わらないのではないか…
内部のものを出しきり、鮮明な頭で考える。この文学は、トイレの中でしか成しえないものだった。
つまり、彼女が一歩でも外をでれば、今まで積み上げてきた物が崩壊する危険性があり、それは同時に、慎重に判断しなくてはならないものだった。
『変身』たるものも一晩で書き上げたものだという…ならば、これもその空間で書き上げなければ、例え、明日に持ち越せば無用の物になってしまう。
つまり、彼女はトイレたる空間に囚われていた。太陽と青空に、黄色い花、一見すると、自由なようでいて、その実、実際には、トイレたるものを描き終わらなければ、この空間における、自由を得ることはできないのではないかと恐れた。
連作たるものの、危険性は、自分ではないものが書いたものを、日々、毎秒、毎分、毎時間、変化しているソレに尋ねなくてはいけなかったのだ。
彼女の場合、この黄色い花に対して挨拶をして
「やぁ、こんばんは、今日は昼なんだけど、君の世界は闇なのかい?」
と冗談じみた辛辣なメッセージを投げたくなる。つまり、投げやりな営みにさせてしまうことを意味した。
これは、憂うべき非常事態、開放的なトイレで考えた積層化された地面に、穴が開いてしまった。
埋めなければ、この崩壊の音楽を止めなければとドラセナは心なしか余裕さを無くした道化となる。
ええい、日本語たるや、複雑か、もしや、君は英語たるものよりも、難解にしたいのか?とドラセナはヤマトの言語に苛立ちながらも、トイレを追求しては、纏まりのない無秩序の中に身をやつす。
これが、トイレで、君は使用者…思いのままに吐き出す。だが、この思いの先にあるものが、青い空の先にあるのが闇ならば、
何を信じて生きていけばいいのか。
だからこそ、トイレにしがみついて、
涙を流す、表面的な笑顔を見せつつ…
谷間の奥に氷を見せては呟く花束を持ち合わせながらの悲しみの音楽隊…
ドラセナの花を置いた彼女は、茫然自失の中で空を見上げる。
トイレが主人か?主人がトイレか
人生とはトイレの中で紡がれるのか?
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