来栖兄妹と生体細胞
――かつて、桃色の生命と黒の進化は、均衡を保っていた。
その均衡は、とある兄妹の心に宿り、ひとつの家の中で息づいていた。
(映像:小さな木造の家。窓辺に光る二つの球体。ももほうくんとくろほうくんが、幼い兄妹のそばでぴょこぴょこ動いている。)
木陰(少女)
「ねぇ、お兄ちゃん……ももほうくんって、なんでこんなにあったかいの?」
怜太(少年)
「たぶん、“優しい心”が入ってるんだ。木陰の笑顔が好きなんだよ」
木陰
「ふふ……。じゃあ、くろほうくんは?」
怜太
「俺かな。弱い気持ちを守るために、黒くなったんだ」
(二人の笑い声が重なり、画面が光に包まれる。)
【第一章:失われた光】
ナレーション(怜太)
みんなは「事故」と言った。
でも、俺は知っている。
あいつらの笑い声。木陰の震える声。――見て見ぬふりをした自分の罪を。
(怜太の拳の中で、くろほうくんが淡く光る。)
くろほうくん
「怜太……君の怒り、わかるよ。
でも、それを使えば――もう戻れない。」
怜太
「いいんだ。あの子のためなら、何も惜しくない。
俺がこの手で、黒を継ぐ。」
(黒い霧が怜太を包み、瞳が紅に変わる。くろほうくんが融合し、背後に影の羽が広がる。)
ナレーション(怜太)
その夜、俺はひとつの誓いを立てた。
「黒」を使ってでも、「桃」を取り戻す――と。
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