【7枚組】うちの子サラトバ転生記 後編 ~勇敢な二人の少女~
ストーリー部分だけで1,700文字以上あります
キャプションを読みつつイラストを味わっていただきたいなと思いましたので、こちらにもキャプションの文章のみのファイルをアップロードしました(別窓推奨です)
https://watashiiro-biyori.skr.jp/txt/tenseiki_caption.txt
※プロンプトは1枚目のものです
それでは、前作に続く後編の物語をどうぞ
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【1枚目】
いつ終わるかもしれない戦争。
燃え盛る炎の音、砲撃の音……兵士達の力強く地を踏み鳴らす音。
最初は勇猛果敢だったうちの子も、次第に体力をすり減らしていった。
(おなかすいたなぁ…)
あんなに軽々と構え、撃ちまくっていた銃が途轍もなく重い。
体力を消耗した今、それを再び持ち上げることさえままならない。
わたしはこのまま、力尽きて倒れてしまい、文字通り鉄砲玉のようになってしまうのだろうか…
絶望に支配されそうになっていた彼女の背後から、声が届いた。
【2枚目】
「これ、食べて。あなた、このままじゃ倒れてしまうわ…」
うちの子が振り返ると、そこには美しいブロンドの髪を編み上げた、彼女よりも2、3歳年上に見える少女がいくつかのパンを入れた器を持ち、立っていた。
彼女はレスランドの娘だろうか?
豊かな小麦畑が作るパンからも容易に想像できる。
【3枚目】
「…どうして?」
うちの子の口からは、不意にそんな台詞が出た。
本当なら、すごくお腹が空いていたから、どうもありがとう!と言ってブロンドの娘が差し出すパンに飛びつきたかった。
だけど、彼女は思惑とはまったく異なる言葉を、対峙する相手に投げつけてしまうのだった。
「あなた、レスランドの子よね。どうして、敵同士のわたしにそんなことするの!?」
目の前に居るのは、レスランドの娘。
今この場においては味方ではなく、敵である。
敵国の娘が差し出す物を受け取りなどすれば、当然ウェスティリアに対する反逆となる。
今目の前に居るブロンドの娘は、わたしをウェスティリアからレスランドへと寝返らせようとしている。
だけど、彼女の存在を消さないといけないという憎しみよりも、彼女がただただ自分に対してそういう態度をとってくることがとても怖くて、うちの子は頭の中がパニックにさえなりそうになった。
【4枚目】
「確かに私たちは敵同士よ」
ブロンドの少女は、自分がレスランドの娘であることを語るに落ちた。
「でも、お腹が空いて倒れそうな人を、私は見過ごせないの!」
「……」
うちの子は返す言葉に詰まった。
ただ、明らかに言えることは、レスランドの少女は、自分を敵視していないということだった。
「大人は野暮だよ。敵だの味方だの言ってさ、馬鹿みたい!」
ブロンドの少女は続けて言う。
「さあ、食べて。あなた、ウェスティリアに帰れなくなっちゃう」
【5枚目】
戦い疲れて、お腹が空いた。
レスランドの少女は、そんなわたしに敵味方構わずに食料を差し出してくれた。
少女の持つ優しさ、そして勇敢さ。
彼女が自分のことを一人の人間として労ってくれていることに、うちの子の目からは堰を切ったように涙が溢れ出した。
「寂しかったんだね。ずっと、独りで頑張ってきたんだよね。偉いよ…」
嗚咽を上げて震えるうちの子の両肩を、レスランドの少女はしっかりと抱きかかえる。
その涙が――うちの子が抱えていた孤独がすべて、戦火の夕闇に溶け切ってしまうまで。
【6枚目】
この出来事は、またたく間にレスランドの国じゅうに知れ渡った。
もちろん、臣民の中にはパンを差し出した娘に対して批判的な者もあったが、国王は寛大であった。
ずっとひとりきりで戦ってきたうちの子と、孤独な彼女を国境を超えて優しく包み込んだ、勇敢な二人の少女。
これからの国を担う子供達がこれだけ純粋であるのに、自分たちはなんと馬鹿げたことを繰り返していたのだろう。
これが、ウェスティリアとレスランドとが和睦に至るきっかけであった――
【7枚目】
眠りからさめたうちの子。
「むっちゃ気持ちよさそうに寝てたよ」
図書委員の子はそんなことを言う。
傍らにあった本には、たしかに『サラトバの歴史』と書かれてあるが、自分が解いたはずの仰々しい紐はどこにもなかった。
正直、どこからどこまでが夢で、どこからどこまでが異世界への転生だったのか、自分にはまったくわからない。
図書委員の子に念のためもう一度たずねてみても「巷で話題沸騰のフィクション小説だよ。貸出禁止の本? そんなんじゃないよ!」と言って嘲笑われてしまった。
本のページを開いてみても、やはり、普通の本で、パァーッと光などは出てこない。
なんだ、ずっと異世界転生したつもりだったけど、結局は夢だったのか…
夢オチにしては、壮大にも程があるなぁ。
でも、とても貴重でかけがえのない体験ができたような気がして、うちの子は、その本を大切そうに、しっかりと胸に抱えるのだった。
Fin
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ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
多忙な合間を縫っての制作だったため、当作品をもちましてわたしのサラトバ企画への参加は終了とさせていただきます。
サラトバの企画が後半戦へと突入した際、わたしが作りたいと思ったのは、やはり「和平への道」でした。
そして、その大きな歴史のターニングポイントが、ちょっとしたことから生まれたら素晴らしいな、と思いました。
顔にすすをつけたり、大泣きさせたりといささかキャラクターにたいしてひどい仕打ちをしてしまった感はありますが、物語の雰囲気は色濃く演出できたのではないかと思います。
ちなみに、難しい構図なので、当初ControlNetやLatent Couple等を駆使しようと企てていましたが、結局、制作時間があまり取れないこともあり、拡張機能は一切使用しないままの仕上げとなりました。
最後に、ちちぷい運営様と、サラトバの企画を立案してくださったみなさまに、この場をお借りして感謝の意を示します。
本当にありがとうございました!
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