近頃少し
アミューズメント施設の中枢を占めるのは、意外にも「UFOキャッチャー」だ。筐体の前には、多様な体格や皮膚色、触角や追加の手足をもつ異星人。彼らは人間と同じように100円硬貨を手に、景品を狙ってアームを動かす。
異星の来訪者にとって、獲得体験はただの娯楽ではない。触角型種族イシグ=リムさんは語る。「私たちの星でも〈収集〉や〈勝負〉は文化の根幹にあります。でも地球のUFOキャッチャーは、挑戦そのものに“遊び”と“感情”を織り込むのです」。
獲得した景品を大切そうに胸に抱く様子は、惑星を超えた共感を映し出している。
この現象の背景には、施設側の徹底した“多文明適応”の努力がある。重力・大気・温度・照度を個別調整できる専用エリア、様々な身体構造に対応した操作パネル、さらには四足歩行や浮遊型の異星人でも快適に歩ける通路設計。多言語・多文明インターフェイス、AI通訳、非音声生命体向け触覚信号対応など、ユニバーサルデザインの粋が結集している。
「地球生まれの技術と遊び心を、銀河の仲間たちと分かち合いたい」。運営責任者・大森隼人さんの言葉が象徴するように、景品も進化。ぬいぐるみやおもちゃだけでなく、異星仕様のフィギュアや星間記念グッズが並ぶ。また、文化や規範の違いによるトラブルを防ぐため、カスタマーサポートも異星人専門スタッフが常駐。通訳AIを介した会話や、健康・安全面への配慮も抜かりない。
地球と異星の垣根を越えたこの賑わいは、アミューズメント業界に新風を巻き起こした。昨年比で売上は20%増、UFOキャッチャーの景品は品薄が続く。施設周辺の商店街も、異星観光客向け商品やサービスで活況を呈している。
遊戯機がつなぐのは経済だけではない。子どもも大人も、地球人も宇宙人も、歓声とため息を分かち合い、言葉や習慣を越えたまなざしが交錯する。夜更けの店内で――景品を手にした小さな異星人が、不思議そうに地球人の子どもと見つめ合う。その瞬間に漂うのは、文明や生態を超えた“共生”への希望だ。UFOキャッチャーは、いまや星々を結ぶ小さな橋。そのアームが、私たちに新たな時代の幕開けを告げている。(宇宙文化部)
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